● トランプ次期米大統領は、移民・関税執行局(ICE)トップに、強硬派として著名な元ICE局長代理を復帰させる。就任初日に米国史上最大規模となる不法移民の強制送還作戦を開始すると宣言しているだけに本気度が滲む。
● トランプ次期米大統領は、犯罪歴のない人々でも逮捕できるように当局の権限を拡大するほか、米メキシコ国境に展開する部隊を増強し、国境の壁建設を再開する。また、数十万人の移民が合法的に入国できるようにしたバイデン政権の人道プログラムを終了し、滞在期限が切れた人々に対して自主的な出国を強烈に促す。何といっても、合法的な滞在資格を持たない移民が1100万人(2022年推計)いるというのだから、生半可な政策では是正できない。
● 不法移民に対して極めて厳しい措置を採るのは、米国だけではない。移民に寛容な国として知られてきたカナダでも、留学ビザを厳格化するなど従来の方針を転換している。反移民の世論が高まる欧州各国でも、不法移民を強制的に第三国に送還する措置が検討され、実施に移されている。不法移民のオーバースティを黙認し、強制送還に及び腰なのは、日本の入管だけである。
● 厚労省が公表した人口動態統計によると、2024年上半期に生まれた日本人は33万人(前年同期比▲6.3%)にとどまり、年間出生数が初めて70万人割れする公算が高くなった。出生数は1949年の270万人をピークに緩やかに減少。第2次ベビーブームの1973年(209万人)以降は明らかな右肩下がりとなっている。価値観の多様化で未婚・晩婚傾向が進んだことに加え、新型コロナウイルス禍で結婚や出産を控える人が増えたことが効いている。
● 政府は「30年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」として「次元の異なる少子化対策」を推進するとして、児童手当や育児休業給付の拡充等を打ち出しているが、少子化を止めることはできまい。
● 上半期の死亡数は80万人(同+1.8%)で、出生数と差し引きした自然減は47万人。1年間で90~100万人のペースで日本人の人口が減っていく。1年間に県がひとつ消失するインパクトが日本経済や日本社会に襲い掛かることは避けられない。そのインパクトをITやAIやDXやロボテイクスで防げると言い張っているコメンテーターは、経済や経営のリアルを知らない。
● 1ヶ月前、在留資格のないベトナム人に宿泊施設を提供したとして、会社役員の夫婦が逮捕された。妻のベトナム人は「オーバーステイと分かっていた」と容疑を認めたものの、日本人の夫は容疑を否認していた事件である。結局、否認していた夫については、「嫌疑不十分」として不起訴処分となった。
● この報道を受けて、「外国人犯罪がまた不起訴?」「検察は仕事しろ!」などの批判がSNSで乱れ飛んだが、不法残留者であることを知っていたベトナム人妻に関する報道はないから、結果を見守るべきだろう。また、管理しているマンションに、不法残留と知りながら、インドネシア人29人を住まわせたとして書類送検された事件も1ヶ月前に報じられたが、その結果も気になる。というのは、この事件では、不動産会社の経営者が「空き室対策のために、オーバーステイと知りながら住まわせていた」と認めているからだ。
● 上記の事件が起訴されて有罪が確定すれば、不法残留外国人に宿泊施設を貸す業者は激減する。そうなれば、オーバーステイの外国人が在留し続けることは極めて困難になる。警察と検察が粛々と公務を果たすことを切に祈る。
● 兵庫県警は10月23日、入管法違反(不法就労助長)の疑いで、東京都に住む人材派遣会社社長ら3人を逮捕。3人の逮捕容疑は、不法残留のベトナム人5人を派遣社員として雇用し、尼崎市の設備工場で作業員として働かせた疑い。この人材派遣会社は群馬県に本店があり、逮捕された他の2人が実務を担当。雇用する際の在留資格の確認手続や指示の有無が調べられている。
● 兵庫県警は9月13日、今回の逮捕容疑に関わる5人を含む8人のベトナム人を入管法違反(不法残留)容疑で逮捕。その後の調べで、社長らが不法就労に関与した疑いが強まったと判断した。ベトナム人8人は、男らの会社が契約した尼崎市のアパート2部屋で共同生活を送り、同じ設備工場で勤務。偽造の在留カードを持ち、派遣先で提示していた疑いもあるという。
● 捜査の対象は「社長が社員に在留資格の確認を指示していたか否か」であるようだが、本当に調べるべきは「派遣先の工場が在留資格を確認していたか否か」。これまでのように「派遣先を信じていたので、私たちは確認していない」という言い訳で許されるのであれば、不法就労は絶対になくならない。
● 川口市クルド人問題がようやく政治の争点になりつつある。埼玉2区では、同区で立候補している高橋英明前議員は「この川口は外国人問題で全国的に有名になってしまった。ルールを守らない外国人はいったん国に帰ってもらって、きちんとした在留資格で来てもらう」として入管の不作為を批判した。
● この批判に危機を感じた新藤義孝前経済再生相も「いわゆるクルド人問題。難民認定申請を繰り返し、10年も20年も川口にいる人たちが増えてしまった。ルールを守ってこその共生だ。川口をあやふやな出入り自由の街にはさせられない」と主張し、従来の「聞こえないふり」から態度を一変させた。
● 40年前ならクルド人迫害の事実はあったが、トルコで、2003年にエルドアン政権が誕生し、クルド人に対する法的な差別をなくした結果、クルド系の政党があり、クルド人の国会議員がいて、大臣も高級官僚もいる。日本で難民不認定になってトルコに帰国したからといって、逮捕されたり死刑になることはない(そもそもトルコに死刑制度はない)。そろそろデマやプロパガンダは終わりにして、淡々と入管法に従って強制送還してもらいたいものだ。
● 管理しているマンションに、不法残留と知りながら、インドネシア人29人を住まわせたとして、入管法違反(不法残留幇助)の疑いで、茨城県の不動産会社の経営者と異なる不動産会社の役員が書類送検された。検察に起訴を求める「厳重処分」の意見が付されたという。6部屋に分かれ、集団生活を送っていたインドネシア人29人は7月30日に摘発され、強制帰国となる。
● 不動産会社の経営者らは、今年7月までの6年間に2100万円を稼いでいて、「空き室対策のために、オーバーステイと知りながら住まわせていた」と認めている。また、このマンションは「不法残留者でも住める物件」として知られており、複数のブローカーが募集していたようだ。この事件だけではない。じつは、同時期に、警察当局は、不法残留ベトナム人に宿泊施設を提供したとして、会社役員夫婦を逮捕するというアクションも起こしている。
● オーバーステイの外国人に部屋を貸していた大家を、不法残留幇助で逮捕したり書類送検するというケースは珍しい。ひょっとすると、不法残留問題に対して、当局が本腰を入れ始めたのかもしれない。今後の動きを注視したい。
● ユニクロの柳井正会長が「日本は30年間成長していない。日本人だけではこれからやっていけない。少数の若い人で大多数の老人をどうやって面倒見るんですか。人口が減っていくなかで、今までみたいに自分たちだけでやろうとしても、そもそも戦えない。少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言したことが波紋を呼んでいる。
● この発言の是非を議論する際には現状を直視する必要がある。全国外国人雇用協会では、求人企業に対して、雇用する日本人と外国人の評価についてアンケートを取っているが、日本人に対する評価(複数回答:9月末)は「すぐに辞める」(30.2%)「根性がない」(25.2%)「努力しない」(18.3%)、「辛抱ができない」(16.0%)「約束を守らない」(13.0%)となっている。
● 日本人と外国人とを比較した場合、「外国人は日本人より真面目」(20.6%超過)「外国人は日本人より熱意がある」(20.2%超過)「外国人は日本人より努力する」(13.2%)ということで日本人の劣位が目立つ。「日本人は外国人より優れている」という前提で議論をしても正しい結論は出てこない。
● 小泉龍司法相は、日本で生まれ育ったものの、親の事情で在留資格がない18歳未満の子ども252人のうち、8割超に「在留特別許可(在特)」を特例で出した。子どもの家族の在特も一部認めている。救済の対象となるかが検討されたのは、18歳未満の子ども263人。検討の結果、自らの意思で帰国した11人を除いた252人のうち、212人(84%)に在特を出した。この212人については、親137人、きょうだい46人の計183人の在特も許可した。
● 一方、子ども40人(16%)の在特は認めなかった。「子どもが就学年齢に達しておらず、日本に定着していると言えない」「親に反社会性が高い違反や、懲役1年超の実刑、複数回の前科のような看過しがたい消極事情があり、他に子の世話をする適切な監護者がいなかった」ケースだったようだ。
● 改正入管法の下では3回以上の難民申請を許さない建前だから、「罪のない子どもまで強制送還するのか」という批判が強かったから、今回の在特は致し方ないだろうが、その前提であるはずの「3回以上の難民申請者を強制送還した実例」は寡聞にして聞かない。入管は本当に仕事をしているのか。
● 勤務先から姿を消す外国人技能実習生が相次いでいる。2023年の失踪者は9,753人に上り過去最多を更新(2020年5885人➡2022年9006人)。中でもミャンマー人の増加が目立つ。政府はミャンマー国軍によるクーデターが起こった2021年以降、ミャンマー人に対して、緊急避難的に転職が自由に認められる「特定活動」への変更を認めた。その結果、2020年に250人だったミャンマー人実習生の失踪者は2021年に447人に増加。その後も増え続け、2023年には3,765人(前年比3倍)が失踪。判明しただけでそのうち1,739人が在留資格を「特定活動」に切り替える手続きをしていたという。
● 驚くには当たらない。「緊急避難措置」を認めた時点でわかっていたことだ。同じことは、同様の措置を講じたウクライナ人やアフガニスタン人でも起こっている。受け入れる準備も覚悟もないのに、入口だけ緩めればそうなる。
● 近年の入管行政の緩さは目に余る。3回以上の難民申請を許さない改正入管法が施行されてから4ヶ月が経過しようとしているが、強制送還された実例は未だにないようだ。入口も出口もユルユルの入管は職務を放棄している。
● ドイツは、不法移民に対応し国民を守るため、全ての陸上国境で管理を強化すると発表。昨年からポーランド、チェコ、スイスとの国境管理を厳格化し、オーストリアとも協力してきたが、デンマーク、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランスとの国境でも審査を導入する。また、EU加盟国を経由して入国した難民申請者を、最初の到着国に送還する計画も明らかにした。
● オランダは「難民危機」を宣言し、国境管理をはじめとする一連の厳格な措置によって移民の流入を抑制する意向を明らかにし、EU共通の難民庇護制度から離脱する方針を示した。デンマークも難民庇護制度からの離脱を交渉している。また、スウェーデンは、移民を母国に帰還させるために最大35万クローナ(約480万円)の給付金を支給する計画だ。米共和党の大統領候補であるトランプ前大統領は、移民を大々的に「強制送還する」と発言した。
● もはや「多文化共生」をスローガンにして「他文化への寛容」を謳っていた欧米の姿はない。しかし、日本だけは「多文化共生ゴッコ」を続けている。川口市の不法残留者すら強制送還できない入管は日本に不幸をもたらす。
● レフト系のメディアが愛知県警を批判している。愛知県警察本部が2010年7月に発行した「若手警察官のための現場対応必携」と題する冊子に「応援求め、追及、所持品検査を徹底しよう!!!」などの記載があったという。
● 「『ニホンゴワカラナーイ』に惑わされないこと。都合の悪いときの単なる逃げ口上である。それ自体が日本語であり、日本に住んでいる限り、日本語を十分理解できるので、身振り手振りも交えてどんどん追及する」「外国人は凶器を持っていることが多く、1人の時は必ず応援要請を行い、間合いと、相手の動作に細心の注意を払う」とか、「車両に乗車している外国人は、運転席横にサバイバルナイフ等を忍ばせていたり、急発進するので、不用意に運転席窓から首や手を入れてはならない」などという説明書きもある。
● 毎日のように外国人と接している立場から見ると、何ら違和感のない叙述だ。残念ながら、日本人の常識では推し測れない対応をする外国人は少なくない。自分の思い通りにならないと大声で騒ぎだしたり、大勢の仲間を呼んで威圧してくるという手を使う輩もいる。愛知県警の対応は決して間違っていない。
● 欧米メディアが「新参者の受容に慎重な国民性のために、法制度や支援制度が複雑化し、結果として外国人が根づきにくい状況が生まれている」「韓国や台湾、さらにはより離れたオーストラリアやヨーロッパ諸国など、労働力確保に懸命な国々と競争していくにあたり、外国人労働者の受け入れに対するこうした消極性が、いずれ日本に不利に働く可能性がある」と論じている。
● 余計なお世話だ。日本の将来を憂える暇があったら、自国における現在の惨状を改善するがよい。円安が進み賃金で見劣りしがちの現時点でも、インドのIT技術者の9割は、「スキルアップ」(32.6%)「日本が好き」(27.7%)「給料が良い」(16.9%)という理由で「日本で働きたい」と回答している。
● 日本が為すべきことは、諸外国と歩調を合わせることではなく、「外国人基本法を作って、外国人受け入れはわが国の国益を判断基準とする」ことである。そんなに難しいことではない。日本のルールを遵守し、日本の慣行を尊重し、日本の文化を敬う外国人だけに在留を認めるということに尽きる。そのためには、ロシアのように言語・歴史・法律の習得を義務付けるべきだ。
● 「日本の水準は諸外国に比べて低い」として、この秋に、最低賃金がさらに一段引き上げられる。議論においては「日本の最低賃金が安すぎて、オーストラリアに出稼ぎに行く若者までいる」などということも話題になった。
● オーストラリアは、ワーキングホリデーの渡航先として人気を博し、ビザ発給は過去最多。最低賃金は2,300円で日本の2倍以上だが、実態を窺うと、渡航したものの仕事が見つからず、現地で困窮して、炊き出しに列をなす若者も少なくない。「仕事に就くまで2カ月ぐらい。130件に応募して面接に進んだのが3件」「オーストラリアの仕事探しは厳しい。一歩タイミングをミスると帰国」「ようやく仕事に就けたものの2時間でクビ」「歩合制だったので、1日8時間とか10時間働いても3,000円」という証言もある。
● そもそも、現地の労働環境や生活水準を無視して、為替換算した賃金水準だけで議論すること自体がナンセンス。スイスの賃金は、日本の3~4倍だが、生活費も3~4倍という話もある。まともに人を雇ったことがない学者や労働組合や弁護士の空論に流されずに、経済実態に即応した議論をしてほしい。
● あるコンビニの店長は、「求人募集をしても、日本人で応募してくるのは中高年ばかり。その年齢でコンビニでバイトしようという人たちのほとんどは、正直言って仕事ができない。大手メーカーを退職後にうちで働き始めた60代の男性は、在庫管理用のスマホ型の端末の使い方を覚えるのに半年かかりました。その一方、外国人アルバイトはみんな仕事をすぐに覚えてくれる。それに急なシフト変更や深夜の残業も快諾してくれます」と証言している。
● 「移民」の話になると、暗黙裡に「日本人は優秀だが外人はダメ」「日本人は働き者だが外人はさぼる」という前提に基づいて主張する論者は少なくないが、いまや日本人の年間労働時間(2023年)は1,611時間(31位)で、韓国の1,872時間(9位)と比べると1ヶ月半以上少なく、米国の1,799時間(16位)より188時間も少ない。怠け者と思われがちのイタリア(1,734時間・20位)やスペイン(1,632時間・26位)にすら後塵を拝している。
● 経営者が二人揃えば「日本人の若い奴は根性がない」「努力しない」「すぐに辞める」という愚痴ばかり。「仕事中毒」のジャパニーズはもういない。
● 人種差別的な職務質問を受けたとして、在留外国人3人が国家賠償請求訴訟を起こしている。原告が証拠として提出した愛知県警の内部文書は「一見して外国人と判明し、日本語を話さない者は、旅券不携帯、不法在留・不法残留、薬物所持・使用、けん銃・刀剣・ナイフ携帯等、必ず何らかの不法行為があるとの固い信念を持ち、徹底的した追及、所持品検査を行う」と明記。
● 警察官は、不法残留者を摘発するために「外国人を見かけたら全員に対して声をかけて職務質問する、それぐらいの意識でやれ。躊躇するな」と教育されている。警察官には「検挙のノルマ」が課されており、人事評価に直結するため、外国人への職務質問を積極的にやれ」と指示されることもある。
● こうした職務質問は「合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」を必要とする警察官職務執行法に違反するという指摘もあるが、夜中に自転車に乗っているだけで職務質問された不愉快な経験をした日本人は数多い。不法残留外国人の大幅増という客観的情勢の下で、外国人に対してだけ職務質問を禁じる道理はどこにもない。
● 2023年の日本人の出生数は過去最低の72.7万人となった。出生数が100万人台を記録した2015年から27.7%も減少した。この背景には、出産期の女性の激減がある。近年出産した日本人女性の9割は25~39歳だが、2015年と2023年を比較すると14%も減っている。「母親人口」が減少すれば、出生数は増大しない。今後「母親不足」はより深刻化していく。じつは、25年後に25~39歳に達する女性は、2023年よりも26%も少ない。要するに、子育て支援策を強化したところで出生数減は止められない。それが事実だ。
● 日本人は毎年70万人前後減少。日本に労働者を送り出してきた国の経済発展は目覚ましく、自国で仕事が創出されている。中国や韓国も外国人労働者の受入れを拡大しており、円安に喘ぐ日本が競り負ける場面は少なくない。
● 「AIやDXによって人手不足は解決する」と語る学者もいるが、人口が減少すれば消費は低迷する。機械は消費しないから、AIやDXが普及すれば国内市場は縮小する。好き嫌いは別にして、移民の議論は不可避。いまは、机上の理想論が空中戦している感じだが、現実的で建設的な議論が必要だ。
● 最低賃金がさらに引き上げられる。その背景には「賃金上昇➡消費増➡売上増➡利益増➡雇用増➡賃金上昇」という好循環が発生するという論理があるのだが、それは夢物語だ。経営者が市場拡大に確信がない間は「賃金上昇+雇用増」には踏み切れないので、中小企業が破綻していくだけで終わる。
● もっとも「中小企業が破綻する」ことについて、政府やエコノミストはズルい回答を用意している。「低い水準で留まっている日本経済の生産性を向上させるためには、付加価値を産み出す力が弱い中小企業を新陳代謝すべき」という論理だ。つまり、「中小企業の破綻➡生産性の低い中小企業の退出➡大企業への人材の移行➡経済全体の生産性向上」という論理を用意している。
● これは「嘘」。潰れた中小企業から大企業に転職した人材などどこにもいない。そもそも、大企業自身が早期退職を募っている。大企業の生産性が高く見えるのは、下請けへの皺寄せを含んだコスト削減が主因で、新たな付加価値を産み出したことによるものではない。じつは、日本経済の生産性を引き上げるために必要なのは、中小企業ではなく、大企業の新陳代謝なのである。
● 難民認定申請者のうち生活困窮者らに国が支給する「保護費」という制度がある。難民認定の1回目の審査期間中、収入がないなど「生活困窮の度合いが高く衣食住に欠けるなど、保護が必要と認められる」人が対象で、「生活保護」に準じた制度だ。生活費のほか、住居費を支給、医療費も実費を支給する。生活費は、12歳以上は月額7.2万円、13歳未満は半額。住居費は単身者で月額4万円、一世帯当たりの上限は6万円。これらにより、支給額の合計は、最大で単身者が月額11.2万円、4人世帯なら同34.8千円となる。
● 2023年度の「保護費」受給者は658人にのぼり、前年度(204人)から3.2倍に。これに伴い「保護費」も当初予算の2.3億円では足りず、補正予算に計上して約1.7倍の総額3.3億円となった。1人当たりの平均年額は約50万円。難民申請者が前年の3,700人から13,800人に激増したことが影響した。
● 「保護費」を巡っては不正受給が問題化。無収入と偽って「保護費」を騙し取ったとして、2012年2月にトルコ国籍の男が、2019年3月には、カメルーン国籍の女が逮捕された。偽装難民に優しい入管行政は結局高くつく。
● 不法残留していると知りながら、東京都中野区のマッサージ店でベトナム人らを働かせたとして中国人経営者の女らが逮捕されたり、在留期限が過ぎているにもかかわらずベトナム人技能実習生を就労させたとして、大阪市平野区で解体業を経営している男性が書類送検されたなど、不法残留者を不法就労させたという「不法就労助長罪」が時折報道されるようになってきました。
● 入管窓口がユルユルですから、「不法残留者」とカウントすべき外国人が増えていることは否定できません。一部の入管窓口では「出国準備ビザ」から「短期滞在ビザ」に変更するという反則技を使いながら、不法残留者の表面化を回避しています。このように「出国準備ビザ」や「短期滞在ビザ」で隠されている予備軍を含めれば10万人を超えていてもおかしくはありません。不法残留者が10万人を超えるのは15年ぶりであり、由々しき事態です。
● 改正入管法が施行されて1ヶ月が経過したにもかかわらず、入管窓口は厳格化していません。偽装難民に対しても、型通りのチラシを配っただけで、強制送還に踏み切ろうとはしません。入管は仕事をする気がないのでしょうか。
● 今年4月から、日本語学校で外国人に教える「日本語教師」に「登録日本語教員」という国家資格が必要になった(経過措置期間あり)。日本語教師は44,030人(2022年度)いるものの、日本語学校の常勤は6,571人に過ぎず、非常勤がその2.4倍もいる(15,891人)。非常勤は年収100万~200万円だから若者は入ってこず、20代の日本語教師は5.4%(2,380人)にとどまる。
● 日本語学校の収入は留学生の学費。途上国の学生が多いと学費はなかなか上げられない。しかも、日中関係が悪化すれば中国人が激減するなど国際情勢で留学生の人数が大変動するので、常勤で雇用するのが難しい。さらに、担当授業時数は「1週間あたり25単位時間を超えてはならない」と法定されているから、時間で稼がせるわけにもいかない。教師の低所得が恒常化する。
● その上、日本語教師は「適正校」の条件を充たすため、留学生の失踪を防がねばならず、面談を重ねたりアパートを訪ねたり母国の家族に連絡するわけだが、その大部分はサービス残業。外国人との共生に当たって、日本語教育は最重要課題のはずだが、岸田政権にはそのインフラを整備する意識がない。
● 昨年7月、女性を巡るトラブルによりクルド人同士がけんか騒ぎを起こし、1人が刃物で切られて川口市立医療センターに運び込まれたところ、双方の親族や仲間のクルド人が100人以上集まり乱闘になった。殺人未遂や凶器準備集合等の容疑で7名のクルド人が逮捕されたが全員が不起訴となった。そのうち1人は、2013年に出た退去命令(不法入国)に従わず、難民申請した偽装難民。不認定となった後には暴行容疑や器物破損容疑で逮捕された経歴もある。上記の事件でも、喧嘩相手の顔を切りつけ大怪我を負わせた。
● 昨年11月、トルコに帰国したが、今年5月再来日。上陸拒否になり収容されたが、仮放免を勝ち取るためにハンガーストライキを実践。脱水や低血糖の症状が出たので仮放免措置にしようとしたが病院側が拒否。強制退去に転じたところ、20人近くのクルド人が入管に押しかけ抗議。護送官付きで帰国便に乗せたが、本人は「すぐにまた来る」と毒づき、在留中の家族も「すぐに再来日させてやる」「弁護士やマスコミを大勢連れてくる」と抗議。
● こんなどうしようもない輩のために、無駄な労力と時間が費やされている。
● 6月10日に改正入管法が施行され、3回以上の難民申請は原則として認められなくなったが、対象となる「偽装難民」の外国人たちの動きは鈍い。「偽装難民」の予備軍である不法残留外国人の反応もあまり芳しくない。もとより、他の在留外国人における「在留期限」の意識が極めて希薄になっている。
● この現状は、2020年5月に導入された「帰国困難ビザ(俗称:コロナビザ)」の後遺症が極めて重いことを意味する。「母国に帰れない」と言い張るだけで在留・就労できるようにしてしまった。さらに、ウィシュマ事件が発生し、入管は「密な環境の中でコロナ感染者が出るかもしれない」という言い訳で収容中の違法残留者を大量に仮放免し、犯罪者予備軍を世の中に吐き出した。しかも、外国人が不法残留になっても収容せず、野放しにする道を選んだ。
● ユルユルの入管行政が4年間も続いたのだから、ここ数年に来日した外国人にとってみれば「入管はビザを出してくれる優しいところ」。「オーバースティの外国人を逮捕し収容する」などということは、きっと想像もできないだろう。改正入管法を断行できるかどうかは、入管行政の死活問題になる。
● 6月10日、3回目の難民申請以降は退去強制が可能になる改正入管法がようやく施行される。小泉法務大臣は「共生社会を作るための基礎をなす制度だ。外国人と受け入れる日本人の間の信頼関係を固めていこうというのが大きな目的なので、しっかりと生かされるような執行を心がけて実行していきたい」と述べたが、この間、「入管と日本人の間の信頼関係」は大きく崩れた。入管が不法残留者を収容せずに放置し、外国人犯罪が増えたからだ。
● 在留期限という基本中の基本となるルールを守らない外国人との間で、信頼関係など成立するわけがない。国際的に「日本は難民申請に甘い国」「難民申請すれば就労できる」という噂が乱れ飛んでいるため、刑罰の厳しいドバイやサウジアラビアでの出稼ぎを避け、来日する外国人たちが増えている。
● 朝日新聞は「自由の拘束に頼らない実務へと生まれ変われるのか」と現実を無視した戯言を吐くが、不法残留者を収容することなしに、外国人犯罪は沈静化しない。入管は偽装の難民申請を淡々と拒否し、不法残留者を粛々と収容すべきだ。そうでなければ、ルールを守っている外国人が浮かばれない。
● 5月16日公表の「不法就労等外国人対策の推進」改訂版は、「①偽変造の在留カード等を行使して就労する事案(派遣での常套手段)、②国内外のブローカーが介在するものを含め、表面上は正規の在留資格を有するものの、その実態は在留資格に応じた活動を行うことなく、専ら単純労働に従事する(「技術・人文知識・国際業務」の派遣)など偽装滞在して就労する事案、③実際には条約上の難民に該当する事情がないにもかかわらず、濫用・誤用的に難民認定申請を行い就労する事案(多くの派遣業者が着手)」を問題視。
● 要するに「派遣」を意識した書き方になっているほか、摘発対象である「不法就労等を企図する外国人や、これらを承知で雇用し、その弱みにつけ込み労働搾取を図る悪質な事業者」というのは「派遣先大企業」のことを指すわけだが、個々の不法就労事件で派遣先を逮捕する事例は少ない。不法就労等外国人対策の具体的内容(改訂)では、「不法就労助長行為事業主に対する労働者派遣事業の許可取消し処分」を明記しているが、ここでの「不法就労助長行為事業主」は「派遣先」のはず。派遣先は十分に注意すべきだろう。
● 「技能実習」を換骨奪胎した「育成就労」に係る改正入管法審議の中で、岸田首相は「政府としては国民の人口に比して一定程度の規模の外国人およびその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする、いわゆる移民政策をとる考えはありません」と述べ、無味乾燥の従来答弁を繰り返した。いつまで経っても「言葉遊び」に終始している。
● 一方、岸田首相は「共生社会の実現」を掲げ、「特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、まして、そのような動機で行われる暴力や犯罪は、いかなる社会においても決してあってはなりません」と力強く述べながらも、足元で急増している外国人犯罪の増加は見て見ぬふりだ。
● 実現困難な「多文化共生」という「キレイごと」を掲げ、「移民」の定義に関する「言葉遊び」を繰り返している限り、在留外国人に対する政策は、確固とした基本理念が存在しないまま、入管法の最低限のルールである「在留期限」すら徹底できない状態が続くだろう。「キレイごと」を排し、目の前にいる「移民」の存在を前提に実現可能で実務的な措置を講じる必要がある。
● 5月16日、不法残留等の外国人65人を企業に派遣したとして、大阪の人材派遣会社と社長ら7人が不法就労助長の疑いで書類送検された。毎月100人以上と契約していたという。5月13日には、ベトナム人ら30人以上を群馬の工場に派遣して不法就労させた人材派遣会社の社長ら2人が逮捕された。
● このほかにも、350人の中国人の在留期間を更新するため、虚偽の在職証明書などを提出したとして、会社役員と行政書士が逮捕されたり、在留カードを偽造した中国人2人が再逮捕されたりしているし、ウソの婚姻関係を結ぶことにより虚偽申請した千葉県のスリランカ女性や愛知県在住のフィリピン女性が逮捕されたなど、最近、在留資格に係る摘発が活発化している。
● 上記の摘発が、入管法令に係る遵法意識を正常化させる端緒になることを望むが、在留外国人の意識は緩んだまま。「ビザ期限が近付いたら、入管で相談したら何とかなる」とお気楽に考えている輩が大勢だ。ただし、ヒドイ低い遵法意識にまで貶めた原因は、ユルユルの甘い対応を続けた入管自身にある。改正入管法が施行される6月10日から正常化するか否かはまだ不明だ。
● 5月1日、バイデン米大統領は「日本経済の失速は、外国人嫌悪で、移民を望んでいないからだ」と公言した。しかし、日本は、2018年に、移民の権利保護を定めた「国連移住グローバル・コンパクト」に署名しているし、300万人も外国人の中長期の在留を認めてもいるから批判される筋合いはない。
● もっとも、その大統領と会って帰国した岸田首相は「高い能力を持ち意欲のある労働者を招き、日本社会を支援してもらえるようにしたいと考えている。だが日本社会の一部には、海外からの労働者移住を無期限に続けるという発想に抵抗する向きがある。だから、完全な移民受け入れ構想ではなく、一定の規則を設けた上で、外国の人材を日本に迎える方策を考えている」と語るのみで、基本哲学も実践的な対策もない。無定見に、かつ、いい加減に労働力不足に対処しているだけだ。だから、入管行政と日本社会が混乱する。
● いま日本政府に必要なのは、「どのような外国人を受け入れるか?」という基本方針。日本のルールを遵守し、日本の慣習を尊重し、日本の文化を敬う気持ちのない外国人を無造作に入れるのは後顧の憂いを増やすだけである
● 労働政策研究・研修機構の推計によれば、2040年の日本の就業者数は2022年より956万人少なくなる。2023年の就業希望者は233万人で、仕事を探している完全失業者178万人と合計すると411万人。これに対し2003年は880万人(就業希望者530万人+完全失業者350万人)だったから、20年間で半減したことがわかる。人手不足というとすぐに「賃上げ」という話になるが、就業者の総数が減るのだから、マクロ的には解決できない。
● 日本商工会議所によれば、2024年度に「賃上げを実施予定」する中小企業は61.3%だというが、賃上げの対象のうちパートタイム労働者が83.3%と最多で、正社員の賃上げは25.4%にすぎない。また、新入社員の初任給を引き上げる分だけ、賃上げの歩みを緩めるケースが多いから、生涯年収は増えるどころか減る場合すらある。要するに、賃上げで問題は解決しないのだ。
● 結局、現実的には外国人材を活用するしかない。採用するのは20~30代になるから、「若い年齢層は外国人中心、年配者層は日本人中心」という組織になっていく。この組織変化に対応できる企業だけが生き残ることになる。
● ある調査によれば、在留資格が切れた後も日本で働きたい外国人が減っているという。理由のトップは「円安による賃金水準の低下」。日本が「選ばれる国」になるため、外国人に合わせた制度に変えるべきという論調は少なくない。2030年時点で419万人、2040年には674万人の人手不足が発生するが、2030年の外国人労働者は356万人、2040年は632万人と予測されており、それぞれ63万人と42万人足りないと予測されているからだ。だからと言って「諸制度を外国人に合わせるべき」という論理は飛躍しすぎている。
● 冷静に見れば、同調査で「在留資格が切れた後も日本で働きたい」と答えた人は91.0%(2022年96.8%)もいる。ベトナムは85.9%と低いが、中国97.8%、ミャンマー97.0%、ネパール96.9%など引続き高水準の国もある。
● 大言壮語を吐く前に、目の前の課題を解決すべきだ。その中でも最優先されるべきは、雇用者のスタンスである。未だに「内定すれば来てくれるはず」という思い込みが強いが、「自社の魅力を十分に伝えて口説く」という心構えの採用担当者は少ない。円安を云々する前にやるべきことは山積している。
● 最近「不法残留者はかわいそう」という記事が増えているが、その中には役に立つ情報が含まれている場合がある。例えば、アフリカ系のイスラム教徒が日本を目指す理由は「フランスやイタリア、アメリカだとその国についたとたん、捕まって連れ戻されるが、日本だとそれはないと聞いたから」だという。そして、難民を支援する団体は「難民申請をして下さい」と教えるが、「難民申請が認められる確率は非常に低い」という事実は伝えないという。
● つまり、難民支援団体の多くは「日本の入管は仏伊米と比べて厳しい」と批判しているが、実際は仏伊米よりも甘いことがわかる。また、難民支援団体は、来日した外国人に事実を伝えることなく「難民申請」を慫慂していることになる。こうした言論や行為が「人道的」であるとは到底思われない。
● 日本において、難民条約上の「難民」に相当する外国人が極めて少ないというのは明らかな事実である。また、「難民に相当しない偽装難民」が極めて多いというのも明らかな事実である。その事実から目を背けて無理を通そうとすれば、真面目に入管法を遵守している在留外国人が割を食うことになる。
● 改正入管法の完全施行日が6月10日に決まった。あと2ヶ月すれば、強制退去を命じられた外国人を本国に送還する仕組みが強化され、送還を拒む外国人の長期収容問題が解消に進むことが期待される。旧法では難民認定申請中の外国人は一律に送還を停止していたが、改正法では送還が止まる回数を2回に限定。3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されない限り送還できる。しかし、いまの入管で強制送還できるかは不安だと言わざるを得ない。
● 2023年中の難民認定の申請者数は13,823人と前年の3倍超に急増。明らかに難民認定申請の誤用・悪用が多く含まれる。このうち、難民認定を複数回申請しているのは1,661人。3回目以上の申請者数は348人で、これらの難民認定申請者は「送還の対象」になるが、入管にはその覚悟が感じられない。
● 本来なら「難民」に相当しない難民認定申請者に対し、早晩強制送還になることを伝えて、自主的な帰国を促すべきところだが、入管の現場にそのような動きは一切ない。それどころか、2~3ヶ月しか認めるべきではない難民認定申請者に対して6ヶ月の在留期間を認める始末。入管は弛緩している。
● 国内に不法残留する外国人は、2024年1月1日時点で79,113人に上り、前年に比べて8,622人(+12.2%)増えたと報道されたが、この報道は正確性を欠いている。というのは、その半年前(2023年7月1日時点)における同数値は79,101人だったから12人しか増えていないという計算になるからだ。これはどう考えてもおかしい。2023年7月1日時点において、大部分が「コロナビザの残党」と推察される「特定活動(その他)」は43,732人もいた。したがって、このうちの半数近くは「不法残留」になる可能性があり、不法残留外国人の総数は10万人に接近すると見られていたからだ。
● 一方、2023年中の難民認定申請者数が前年の3倍に当たる13,823人に急増しているから、難民申請に転じた外国人も少なからずいたと推察されるが、それを勘案しても「コロナビザの残党」のすべてを吸収したとは思われない。
● だとすれば、在留期限が迫った外国人に対して、入管窓口が「短期滞在ビザ」を許可したり、「帰国準備ビザ」の発行や更新を大盤振る舞いした可能性がある。そんなことでは、潜在的な不法残留候補者を増やすだけである。
● 2月28日、家庭用品等を製造する会社の社長ら2人が派遣免許を得ていない人材派遣会社と共謀して、50人余りの外国人を工場の作業員として派遣させ、違法に働かせたとして逮捕された事件は、結局、不起訴で終わった。「派遣業者が無免許だということを知っていて、共謀して、外国人の不法就労を行った」という「労働者派遣法違反の共謀罪」という建付けが元々無理筋だったのだが、今回も派遣先は咎められなかったという結果になる。
● 結局、「派遣先が在留カードを確認する義務を怠っていたので、不法就労助長罪で逮捕した」という正攻法で行けなかったことが警察の敗因。入管法第73条の2は「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」と「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」を不法就労助長罪に問うことを定めているから、本来、派遣先はアウトのはず。
● 入管法改正で「不法就労助長罪」は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」から「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」に厳罰化されるが、「派遣先免責論」が通用するのなら、派遣先は違法派遣を求め続ける。
● 3月5日、入管庁は、在留資格を持たない外国人に「在留特別許可」を出すか判断する際の新たなガイドラインを発表。新たなガイドラインでは、親が地域社会に溶け込んで暮らし、子どもも長期間日本の学校に通っていることなどを積極的に評価することを明記した。明確化を評価する声がある一方で、「かえって不法残留を促進するのではないか」という指摘も少なくない。
● 昨年8月に、入管庁が子どもに対して「在留特別許可」を与えるという方針を打ち出したのは、改正入管法が施行されると、難民申請に関する「スリーアウトルール」が適用され、子どもだけを日本に残して親を退去強制させるケースが増えるため、「1回限りの特例措置」ということだったはず。
● ところが入管庁は、未だに不法残留者に対する収容に消極的で、社会問題化した「川口市のクルド人問題」についても何ら対処しない。「不法残留」に甘いまま「特定技能」の外国人を5年で80万人増やそうというのは愚挙と言わざるを得まい。まずは「不法残留の外国人は例外なく収容し、退去強制させる」という当たり前のことを当たり前にできてからにしたほうがいい。
● 2月28日、家庭用品等を製造する会社の社長ら2人が派遣免許を得ていない人材派遣会社と共謀して、50人余りの外国人を工場の作業員として派遣させ、違法に働かせたとして「労働者派遣法違反」の疑いで逮捕された。
● 警察は、すでに(違法)派遣元の経営者を逮捕し、工場を家宅捜索して、不法就労していた外国人を大量に検挙しているはずだ。それで(違法)派遣先の関係者を取調べしたのだろうが、「在留カードの確認は派遣元に任せていた。不法就労とは知らなかった」と言い訳されたので、派遣会社の派遣免許が切れていたことを口実に「労働者派遣法違反」で逮捕したと推察される。
● もっとも、派遣先が派遣免許の有無を確認しないで契約したところで、行政指導が関の山で、刑事罰の対象ではない。もっとストレートに、「派遣先が在留カードを確認する義務を怠っていたので、不法就労助長罪で逮捕した」という当たり前の話にした方が良い。法務省は「不法就労助長罪」の法定刑を「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」から厳罰化するというが、厳罰化の前に、違法派遣の派遣先を当たり前のように検挙すべきだろう。
● ある調査では、「会社に貢献したい」と思っている日本人は5%(2022年)にとどまり、4年連続で過去最低を更新。一方、世界平均は23%と調査開始以降の最高値を記録した。ほかにも、日本は「仕事に対して満足」と回答したのは42%で34カの国の中で最下位というアンケートもある(2019年)。
● 実際、「以前のように燃えるように仕事に取り組む人は、目に見えて減りました。とくに20代は完全にプライベート優先で、気に入らない仕事だと、途中で投げ出す。強く注意をすると、『はいわかりました』と言ったきり会社に来なくなる。どうしたもんでしょうかね」「私も周りのメンバーも、モチベーションや会社への帰属意識が下がっています。コロナ禍以降、自分は自分、人は人という感じで、職場の一体感がなくなりました。この会社で自分が成長できるという実感もありません」などという白けた意見も目立つ。
● 処方箋として指摘されるのが「ジョブ型雇用」だが、中途半端に導入するのは逆効果。日本人社員のクオリティが下がれば、相対的に外国人の評価は上がる。外国人の採用が増えている背景には、日本人社員の質の低下がある。
● 明確に書かれることはないが、世の中に溢れている「外国人労働者論」や「移 民論」には「(単純労働を担っている)外国人労働者は、日本人よりもレベ ルが低い」という前提が置かれている。しかし、この前提は崩れている。
● 実際に外国人を雇っている経営者に聞くと「今は外国人の方が優秀で、しっ かり働いてくれる。少なくとも、私の店ではそうです」「正直、帰国せずず っと働いて欲しかった」「優秀な外国人が帰国し、残ったのは資格も技能も 無い、単純労働しかできない日本人だけ。学ぼうという向上心もなく、文句 を言うばかりで、こちらも受け入れたくない」などという本音が洩れてくる。
● しかも、外国人労働者の待遇が日本人に近づいてくると、「『なぜ外国人と 同等なのか』という不満の声が日本人から上がる。『賃金が低い』『激務だ』 といって敬遠していたのは日本人じゃないか。結局『ただ単に働きたくない という自分勝手』と思うしかない」という嘆き節すら聞こえてくる。このよ うに、日本人労働者に対する厳しい批判は少なくない。世の中の論者たちは、 日本人労働者の質が劣化しているという現実をもっと直視すべきだろう。 法人会員は、VISA Report で宣伝されている商品やサービスについて、特別サー ビスや割引等の特典を享受することができるほか、弊協会が「優待措置合意証書 (緑のステッカーを貼った青いノート)」に記載した「入社御祝金」を購入代金 の一部(最大 50%)に充当できます。詳しくは、代表理事にご質問ください。
● 「永住者」の在留許可を得た外国人について、税金や社会保険料を納付しない場合に在留資格を取り消せるようにするという法改正の検討を日本政府が始めた、という報道があった。外国人の受け入れが広がる中、公的義務を果たさないケースへの対応を強化し、永住の「適正化」を図る狙いだという。
● 在留外国人が居住することによって様々なコストを負担している地方自治体からは、在留外国人の在留資格に関して、「納税の履行を確認すべき」「滞納していれば、許可の取り消しも必要」などの声が寄せられていたという。外国人の居住によって、様々な地域問題が発生している以上、当然のことだ。
● 納税や社会保険料を納付しない在留外国人を優遇したり、在留を認め続けるべき理由はない。遅かれ早かれ、「永住者」だけでなく、他の就労資格に関しても、在留期間の更新や在留資格の変更の際に、税金や社会保険料を納付したことの証明書が求められるようになるだろう。「特定技能」は、その先発隊として、制度内にその方針が埋め込まれている。日本で働く外国人も、外国人を雇おうとする日本企業も、納税証明が求められてくるに違いない。
● 静岡市の産廃業者にインドネシア国籍の男4人を違法に派遣して働かせたとして、日本人3人とインドネシアのブローカー1人が逮捕された。4人は派遣先の産廃業者に対して外国人労働者の在留カードを示したものの、偽造されたものだったという。また、4人は派遣事業の手数料に加え、労働者の給与の一部を天引きするなど不当な収益をあげていた可能性もある。
● 懸念されてきたとおり、日本全国で「不法残留+ブローカー+偽造在留カード+外国人派遣」という「不法就労ネットワーク」は大々的に稼働中だ。弁護士は「会社を守るためという意味でも、本人の同意を得た上で(在留カード)を見て記録した方がよい」と言うが、偽造在留カードが使われたら、入管のアプリを活用して真偽をチェックしない限り、見破ることは難しい。
● 摘発した在留カードの偽造工場で入手した顧客リストを基にして、購入者を虱潰しに逮捕するとともに、派遣業者やブローカーだけでなく、派遣先企業を摘発していくしかない。無論、偽造在留カードの場合、派遣先企業は免責されるべきだが、そういうリスクがあることを広く知らしめることが必要だ。
● 2016年に来日したガーナ人は、日本語学校の卒業後、食品会社でパン製造に従事。しかし、慢性腎不全を患ったため、2019年から透析治療を開始。治療目的の在留資格を得て、週3回の透析治療をしているが、就労が認められておらず、収入源がなくなった。このため、2021年11月、市に生活保護を申請した。市は同12月、国民に準じる在留資格ではないとして申請を却下。
● この申請却下を受けて、ガーナ人は千葉市の処分取り消しを求めた訴訟を起こしたが、千葉地裁は「生活保護の適用の対象は国民と定められ、外国人は対象にならない」として訴えを退けた。生活保護の給付について「1954年の厚生省の通知に基づき、給付を受ける権利がある」という主張についても、「在留資格を持つ全ての外国人が対象ということではない」とされた。
● ガーナ人は記者会見を開き「ここで諦めるわけにはいかない。希望は失いたくない」と控訴する方針と聞くが、そもそも在日ガーナ大使館が支援を拒否したガーナ人をどこまで日本国が面倒を見るべきか、という疑問はついて回る。「多文化共生」という空論を根拠に「救うべき」という判断は下せない。
● ある元入管職員は「入管問題の根底にあるのは広大な裁量」と指摘した上で、「広大な裁量がコントロールされず、無規律であることが問題」だと説く。「審査にはある程度の基準はあるものの、基準が地方局ごとに違う。入管行政では、法務大臣の権限が地方の入管局長に委任されて、地方入管局長の名義で処分が下されます。そのため、地方の局長ごとのキャラクターが出て、ローカルルールができてしまう。在留特別許可に限らず、正規滞在者の在留資格についても、おしなべてローカルルールが用いられます」というのだ。
● しかも、「地方局に最終判断が委ねられているため、同じようなケースでも東京入管では不許可、大阪入管では許可みたいなことが当たり前のように起きているのです。地方局ごとのローカルルールが幅をきかせ、同じようなケースでも局によって判断が違う。裁量判断に統一性がなく、恣意的で一貫性がない。要するに、不公平なのです」というのだから、極めて大きな問題だ。
● その元入管職員は「多くの職員は釈然としない思いを抱えながら仕事をしている」と語るが、そうなのであれば早期に自ら是正することを期待したい。
● タクシーやバスなど客を運ぶ車の運転に必要な「2種免許」について、警察庁は外国語での試験を可能にすることを決めた。これまでは日本語でしか受験できずに外国人は合格が難しく、運転手不足に悩む業界団体から多言語化の要望が出ていた。警察庁は近く、各都道府県警に20言語に翻訳した問題例を配布する。対象言語は、英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語、タガログ語、タイ語、インドネシア語、ネパール語、クメール語、ミャンマー語、モンゴル語、スペイン語、ペルシャ語、韓国語、ロシア語、アラビア語、ウルドゥー語、シンハラ語、ヒンディー語、ウクライナ語にまで広がる。
● 運転免許試験は各都道府県警が問題を作成しており、車の運転に必要な「1種免許」の学科試験は、徐々に拡大し現在20言語に対応している。だから「2種免許もいいじゃないか」ということなのだろうが、本当によいのか。
● 外国人材が必要であることは議論の余地はないが、本気で受け入れて真剣に共生することを目指すのならば、日本語は必須。日本語が通じないタクシー運転手を増やしていくことは、「外国人と共生できる社会」とは相容れない。
● EUの欧州委員会は、EU域内への移民や難民の受け入れを規制する新たな協定案に合意した。イタリアやギリシャなどに「難民審査センター」を設置し、資格が無いと判断された人は、第三国に強制送還されることになる。
● フランス議会は、居住許可要件を厳しくして不法移民の追放をより簡単にし、児童・住宅手当などへの支給開始時期を数年繰り下げ、国籍法の基本であった「出生地主義」の見直しに着手した。ドイツでは、反移民を掲げる政党「ドイツのための選択肢」が首長を勝ち取るようになり、移民国家である豪州でさえ、外国人留学生や一時労働者の流入を減らす政策に転じている。
● これらの先進諸国における移民政策の転換は、これまで欧米を席巻してきたキレイごとの「多文化共生」が完全な失敗に終わったという事実を示している。「労働力を受け入れる」ことと「人間を受け入れること」の違いを軽視し続けた結果がこれだ。「多文化共生」は「自国文化の相対的軽視」であり、「共有する自国文化」が存在しなければ「同一の価値観を基盤とした国家」は成立しなくなる。しかし、日本は未だに「多文化共生」を唱えている。
● 韓国は、今年3回に亙る取締を通じて、歴代最多となる不法滞在者38,000人を検挙。今年10月10日から12月9日まで実施した第3次に限っても、不法滞在・就職外国人を計7,255人摘発している。サウジアラビアでも、居住・就労・国境警備に関する規則に違反したとして、当局が1週間で17,257人の外国人を逮捕した。他の諸外国でも、違法移民に対しては、厳しい目が向けられており、難民申請を他国で行うなど大胆な法改正が実施されている。
● その一方東京都は、12月を「外国人適正雇用推進月間」とし、都内3か所の駅において、街頭キャンペーンを実施し、外国人の適正雇用推進と不法就労防止を呼び掛けて、啓発グッズなどを通行人に配っているだけ。不法残留など入管法にかかる都内の摘発件数は11月末時点で約2千件で、昨年1年間の1,173件から2倍近くに上っているというが、危機感が感じられない。
● 東京都治安対策課は「在留カードの期限をよく確認してから雇用してほしい」と強調したらしいが、大企業派遣先には伝えたのか。「不法残留+違法派遣+偽造カード」というシステムを破壊しなければ不法就労は撲滅されない。
● 11月30日、有識者会議は「技能実習」の廃止と「育成就労」の創設を求める最終報告書を法務大臣に提出。未熟練の外国人を育成し、中長期的な就労につなげるという新制度は「人材確保」の目的を強調しており、育成期間は3年間で、技能検定と日本語能力試験に合格すれば、最長5年働ける「特定技能1号」に移行可能としているが、期間途中での転職が多少可能になるくらいが変更点であり、現行の「技能実習」を換骨奪胎したにすぎない。
● したがって、技能実習に係る諸問題は基本的に何も解決しないが、むしろ、重要なのは、「育成就労から特定技能制度へ円滑な移行を促す」という基本方針を示した点である。1993年の導入当初17職種から始まった「技能実習」は現在90職種にまで拡大したが、「特定技能」も同様の流れになる。新しい政治利権の誕生だ。業界団体は毎年ヤキモキすることになるだろう。
● 「技能実習」を廃止する代わりに、「技能実習生や留学生等に対する雇用維持支援(特定活動・1年)」を復活させて、「特定技能0号」という位置付けにすればよかった。そうすれば、「技能実習」の諸問題は解決しただろう。
● 法務省は、「外国人との共生に係る啓発月間」を創設し、啓発イベントを実施する。毎年1月を「ライフ・イン・ ハーモニー推進月間」と命名し、来年1月に、象徴的なイベントとして「オール・トゥギャザー・フェスティバル」を東京国際交流館において開催。外国人との共生をテーマにしたトークショー、やさしい日本語の体験コーナー、異国料理の出店等を予定している。
● 相変わらずの「多文化共生ゴッコ」に呆れる。そもそも、不法就労を検挙するために毎年6月に実施(通常は12月も実施)してきた「不法就労外国人対策キャンペーン月間」を「共生社会の実現に向けた適正な外国人雇用推進月間」という名称に変更したころから、風向きが怪しくなっていたが、急増する不法残留者問題に対峙するスタンスも、川口市クルド問題を解決する風情もなく、机上の空論の「多文化主義」を推進する識見の低さに愕然とする。
● 「多文化主義」から、日本のルールを遵守し日本の慣習を尊重し日本の文化に敬意を払う外国人だけに在留を許可する「同化主義」に切り替えなければ、川口市クルド問題が全国に蔓延する。小泉法相が率いる入管行政は危うい。
● 11月22日に行われたオランダ議会下院の選挙は、反EUを掲げる自由党が予想外の勝利を収めた。自由党党首は「津波のように押し寄せる難民と移民は制限されるだろう」と勝利宣言し、反移民のスタンスを明らかにした。
● また、スウェーデンは、難民・移民を強制退去する要件を新たに導入するため、現行法を見直す計画を発表。要件とされる「不品行」の例として、スウェーデンの価値観を脅かす思想表明を挙げている。政府高官は「移住希望者にも基本的規範を守ってもらい、誠実かつ品行方正に暮らしてもらう」「スウェーデンが支持する民主主義的な価値観にそぐわないものを望むか、積極的に反対するなら、この国から出て行ってもらうしかない」と述べ、従来、欧州各国で一般的だった「多文化主義」と決別するところまで変貌した。
● 机上の空論にすぎない「多文化共生」を追求してきたことにより、国内で深刻な文化の衝突を体験し、解決困難な問題を抱えてしまった欧州各国は、反移民・反多文化主義のスタンスに転じ始めた。日本は、欧州各国の経験を踏まえ、「多文化共生」というキャッチフレーズは早急に棄て去るべきだろう。
● 11月4日に杉並区立柏の宮公園で開催された「難民・移民フェス」が物議を醸している。参加した区民の女性が「お茶を飲みませんか」と話しかけられ、「どこの国から来たのですか」などと軽くおしゃべり。「どうやって日本に来たのですか」と尋ね、外国人女性が「飛行機に乗って来ました」と答えたので、「飛行機で来たのなら、パスポートは持っているのですね」と尋ねたところ、外国人女性が次第に激高。「神は一人しかいない」と言ったあと、「神はあなたを殺す」と大声で3回繰り返したことが問題視された。
● 普通の会話が成り立たないのでは、「多文化共生」など不可能だ。そして、欧州は「多文化共生」が失敗している事例をこれでもかと示してくれている。
● この手の「多文化共生」を訴えるイベントは毎週のように全国各地で開催されているが、「多文化共生」よりも、日本のルールを守り、日本の慣習を尊重し、日本の文化に敬意を払うという「同化主義」が大切だ。机上の空論にすぎない「多文化共生」を前提にすると、様々な軋轢が全国で発生するだろう。「ごちゃごちゃ感が最高です」と無邪気に思う日本人はほとんどいない。
● 1 億 2500 万人いる日本の人口は、2070 年には 8700 万人(▲30%)になり、 2120 年には 5000 万人(▲60%)を割り込むレベルにまで激減する。足元の 統計でも、日本人の人口は前年比 84 万人以上減っている。1 年で山梨県や 佐賀県(共に 81 万人)が消失する衝撃が日本経済を襲い続けている。
● こうした人口の減少傾向は 2011 年以来、12 年連続で続いており、増加傾向 に転じる気配は全くない。そうなっていけば、国内市場は自ずと拡大余地が 狭まり、日本企業のサバイバルゲームは激しさを増す。人口の分布を地域別 に見ると東京・名古屋・大阪という三つの大都市圏に半数強が集中。人口減 少というマイナスインパクトは、地方の産業を根こそぎ壊滅させかねない。
● すでに日本の GDP はドイツに抜かれて世界第 4 位に落ちる。遠からず、イ ンドを含む新興国に軒並み抜かれてトップ 10 から転落する可能性すらある。 個々の日本企業としては、100 年後の人口半減に即した日本社会と産業構造 に対応できる企業体質を構築していけるか否か。生き残るためには、外国人 材の採用と育成と活用を普段の人事インフラとして組み込む必要がある。
● 日本経済新聞によれば、「経営・管理」の在留資格に関する許可条件を緩和するらしい。現在、当該ビザを獲得する際に最大の障壁となっている「出資金500万円」という条件を「0円」にする方針のようだ。それにしても、「外国人の起業家が増えることで海外の最先端の技術や、外国人ならではの発想を取り込むことができる。米国にはグーグルやテスラなど海外から来た経営者が次世代の産業を生み出した例がある」という解説には笑ってしまった。
● 500万円程度の資金を調達する経営力がなくて、艱難辛苦の起業に成功できるわけがない。ベンチャーというのは、だいたいが10年以内に潰れるものだ。500万円程度の資金調達力がない人間がセルゲイ・ブリンやイーロン・マスクになれるわけがない。彼らの伝記には「起業時に政府から500万円の資金補助があったから、いまのグーグルがある」とは書かれていない。
● 「出資金500万円」の条件が緩和されて喜ぶのは、インチキな在留を可能にする「ビザ屋」とその顧客だけだ。机上の空論を並び立てた経営計画を、起業の経験がない入国審査官が審査するという喜劇。呆れてモノが言えない。
● 最近、ビザ期限を守らずに逮捕される外国人の記事が増えている。偽造在留カードを所持している事例も少なくなく、難民申請という安直な方法で在留期間を実質的に延長する偽装難民も多い。近年、難民申請をした外国人は年間2,000人~3,000人という水準で推移してきたが、2023年1~9月は11,000人を超え、過去最多(2017年19,629人)に迫る勢いになっている。
● 事実として、2023年7月1日時点において、在留期限を過ぎて、不法残留している外国人は79,101人に上った。半年前に比べて+12.2%(+8,610人)の増加であり、1年前と比べれば+35.8%もの大幅増になる。2023年1月1日時点の不法残留者は70,491人だから、同じ増加率になるとすれば95,727人となり、ほぼ10万人になる。もはや放置してよいレベルではない。
● このまま、入管がオーバーステイに対して甘い対応を続けていれば、数年と経たないうちに、不法残留する外国人は30万人規模に膨れ上がり、犯罪増などの諸問題を引き起こし、排外感情を激増させるだろう。それは、ルールを遵守して真面目に日本で生活している外国人にとってよいことではない。
● 国勢調査によれば、去年 10 月 1 日の日本の人口は、1 億 2622 万 6568 人で、 前回 5 年前の調査と比べて 86 万 8000 人減りました。前回より人口が減少 したのは 38 の道府県で、市町村別でも全体の 8 割以上の市町村で人口が減 っており、半数を超える市町村では減少率が 5%以上となりました。世帯数 は 5571 万 9562 世帯で、前回よりおよそ 227 万 1000 世帯増えた半面、1 世 帯当たりの人数は 2.27 人と過去最少を更新し続けています。
● 国連の推計によれば、2020 年の世界の人口は 77 億 9500 万人で、日本は世 界で 11 番目となり、トップテンから脱落しました。人口の増減率でみると、 人口上位 20 か国の中で減少となっている国は日本のみとなっています。コ ロナ禍で少子化が進んだだけに、今後さらに人口減少が進むことは必至です。
● 人口減少は「静かなる有事」。未だに「AI やロボティクス等で生産性を向上 させれば対処できる」という勇ましい言論を吐く方が大勢おられますが、そ うであれば、自ら現場で実践して見せるべき。農業や漁業に始まり、製造業 から介護に至るまで、外国人がいなければ回らない現実を直視すべきです。
● 2019 年における日本人の平均年収は 38,617 ドル。米国($65,836)やドイ ツ($53,638)に大きく差を付けられただけでなく、韓国($42,285)の後塵 を拝しています。自動車は世界中概ね価格は同じですが、トヨタの 1 台あた り平均販売価格は、世界経済の成長に合わせて、概ね 20 年で 1.5 倍になり ました。しかし、この間、日本人の賃金は横ばいに終始。その結果、日本人 にとってクルマは高嶺の花になってしまいました。
● 日本人の賃金が上がらなかったのは、バブル崩壊以降、日本の経済成長が止 まってしまったからです。日本がゼロ成長を続けている間に、諸外国は経済 規模を 1.5 倍から 2 倍に拡大させました。その原因は、色々と取り沙汰され ていますが、「新しいチャレンジ」を鼓舞することなく、前例踏襲のビジネ スモデルに我執した結果だと言っても、大きく間違ってはいないでしょう。
● 上記の「新しいチャレンジ」の中には「移民の受入」も含まれます。しかし、 コロナ禍の下、入国禁止措置が長引く中で、守旧派と排斥派が勢力を増し、 チャレンジの機運は急速に萎んでいるように見えます。将来が危ぶまれます。
● 2020 年の出生数は 85 万人に届かなかったと見られています。今年は 80 万 人を割り込むかもしれません。100 万人を切ったのが 2016 年で、90 万人を 下回ったのが 2019 年ですから低下が加速しています。新型コロナウイルス 感染症の影響があったとはいえ、ピーク(1949 年 270 万人)と比べれば3 分の1以下ですから、そのインパクトは甚大です。年間死者数が 138 万人 (2019 年)いる中で、婚姻件数がピークから半減している(1972 年 110 万 組→2019 年 60 万組)ので、これからやってくるのは「大少子化時代」です。
● 悩ましいのは、この人口減少が日本だけの問題ではないということ。2020 年 の出生数は、台湾▲7%、韓国▲10%、中国▲32%と軒並み大幅減となって おり、世界的にも同様の結果が観察されています。その結果としてもたらさ れるのは、中長期的な「移民の争奪戦」です。日本を含んでコロナショック 下の失業対策に乗り出さなければならない時期に、骨太の基本方針を決めて、 的確な布石を打っておかなければ、日本人の 3 分の1が高齢者になる 2030 年に向けて、深刻な諸問題が噴出していくことになるでしょう。
● 人材会社ディスコの調査によれば、2020 年度に外国人留学生を「採用した」 企業は、全体の 35.4%となり、前年水準(34.8%)をわずかながら上回りま した。一方、2021 年度の採用を見込んでいる企業は 39.2%にとどまり、前 年水準(50.6%)を大きく下回りました。新型コロナウイルス感染症の拡大 による先行きの不透明さが、採用意欲を大幅に減退させていると見られます。
● 規模別にみると、大企業(1000 人以上)における採用縮小が顕著であり、採 用見込みが 69.0%(2020 年度)から 50.0%(2021 年度)へと落ち込んでい ます。中堅企業(300~999 人)でも 44.3%から 39.2%に低下していますが、 逆に小企業(300 人未満)は 29.6%から 33.3%と採用意欲を高めています。
● 緊急事態宣言の中でも、将来を展望する経営者は、「大企業が採用意欲を落 とした今こそ、良い人材を採用するチャンスだ」と捉えているのかもしれま せん。ピンチを「ピンチ」と思い込んで自粛一方に走るのではなく、「ピン チはチャンスという側面が必ずある」というスタンスで常にビジネスを見直 す柔軟性を持つ企業だけが今後生き残っていくのだと思います。
● コロナショックの中で、短期的に「人手不足」から「人余り」に転じた日本 企業は、余剰感が高まった中高年社員を放出し始めていますが、雇用調整助 成金の特別措置が切れたら、大量解雇へと移行します。失業問題が最優先課 題となる中で排外的なムードが高まれば、構造的な若年層不足という問題に は目をつぶり、外国人材の受入れが敵視される危険性もゼロではありません。
● しかし、各企業がスリム化に走る現状をポジティブに捉えれば、硬直化した 人事制度を抜本改革できる機会が訪れていることを意味してもいます。今は 厳しく辛い局面ですが、だからこそ、終身雇用や年功序列賃金や新卒一括採 用から脱皮することができる最大のチャンスでもあるのです。
● 近年、「ジョブ型雇用」という単語がバズっています。じつは世界的には、 日本型雇用よりも「ジョブ型」が標準です。慣れ親しんだ日本型雇用を維持 し続けることは最早不可能であり、若年層の外国人材を受け入れる器を整備 するためにも「ジョブ型」が必要です。欧米型を真似る必要はありませんが、 今回の不況を機に自社なりの「ジョブ型」を模索する価値はありそうです。
● パソナグループの南部靖之代表は、「これから失業者が百万人単位で増加す る可能性があり、失業率は過去最高の水準まで上昇するだろう。新卒採用も 予断を許さない。外国人労働者の日本での就職も極めて困難になった。外国 人留学生でさえ就職が難しい状況において、社会人の外国人が就職するのは 無理だ」と断言していますが、失業が増える中では、「外国人がいるから、 日本人が就職できない」という主張が増えていくと思われます。
● 気になるのは、「外国人がいるから日本人が就職できない」と主張する論者 は、「日本人は優秀なのに、外国人が安い賃金で働くから就職できない」と いう仮説を信奉していること。しかし、外国人を雇用している経営者に聞く と、「最近の日本人は来社の約束も守らない」「日本人の若者はいいかげん」 「外国人は日本人よりも熱意があって努力する」という声が少なくありませ ん。低賃金でなくても、外国人を選ぶ社長は少なくないのです。
● 日本語能力で圧倒的に優っているにもかかわらず、同じ賃金水準の外国人に、 負ける日本人が増えているという現状は、直視したほうがよいと思います。
● もはや、昔話の域に達しようとしていますが、「コロナショックが日本全土 に襲来する前の時代」において、人手不足が大問題だったとき、「移民を受 け入れる必要はない。なぜなら、RPA(ロボティック・プロセス・オートメ ーション=ロボットによる業務自動化)で対応できるからだ」という勇まし い論陣を張っていた専門家と名乗る怪しい輩が大勢いました。
● しかし、現実を見ると、コロナショックが襲来する以前の2019年頃からRPA 導入の失敗例が取り沙汰されるようになり、「熱狂」は「幻滅」へと変貌。市 場は急拡大から縮小へと転じます。問題は、①対応範囲の狭さと②現場の導 入負担と③コスト・パフォーマンス。要するに、完全に標準化できる単純作 業には向いていても、判断が係わる業務だと途端に難易度が高まるのです。
● あるホテルではロボットを従業員として「採用」したのですが、「おもてな しの心がない」というクレームが顧客から出たため「解雇」した、という事 例からも窺い知れるように、挑戦の壁は高くそびえたちます。移民は移民で 悩ましい課題が多いのですが、ロボットはロボットで難題山積なのです。